真打・死神

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さてさて。何から話したもんですかね。 なんせ、久しぶりの寄席だ。あたしも緊張してまして。 口の悪い弟子なんかからは 『え!? 師匠でも緊張するんですか? 図太いのに?』 なぁんて、憎まれ口を叩かれますがね、こればっかりは馴れない馴れない。 あたし、根が小心者ですから。本番は寄席の裏で、ガタガタ震えてんですよ。ほら、最近は下手なこと言うと、すぐにネットで炎上するなんて言われるでしょ? 弟子達からも『師匠は口が悪いし、素行も悪いから気をつけて』って注意されてましてね。 やかましい話ですよ。あたしほど、臆病で、気の優しい男も居ませんのにねぇ。 あら、信じられませんか? お客さんもあたしのこと、図太くて素行の悪いジジイだって思ってます? あたしゃ、小心者ですよ。なんせ、うちのかかあに頭が上がらない。 この間もね。あたしゃ、かかあに怒られまして。 『あんた!! 世間様はマンボウで、緊急事態で大変な時に、パチンコに行きたいなんてどういうことだい!?』 と。 で、あたしもちょいとばかし、カチンと来たもんですから 『バカヤロー。マンボウかヤン坊か知らねぇが、俺の財布が緊急事態なんだよ!! こういう時は、男らしく玉打って稼がねぇとよ!!』 って言い返したら 『あんたの財布をロックダウンしてやろうか』 なんて、どっかの政治家先生みたいなこと言いやがりましてね。
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