真打・死神

3/8
前へ
/9ページ
次へ
え? やっぱり素行の悪い不良ジジイですか? 奥様が正しい? ……ごもっともでございます。失礼しました。 まぁ、かかあの話は置いといて。 あたしの友達の話でもしましょうかね。 友達って言っても、そいつはあたしの息子ぐらいの年齢でね。ええ。男です。 これがけったいな男でしてね。 名前は山田登(ヤマダノボル)。役場に置いてある……ほら、書類の見本があるじゃないかですか? 記入欄に書いてある名前。あんな感じの平凡な名前ですよ。 なのに、格好がね……けったいな格好してやがんですよ。この男。 ズドーンと大きな身体に全身黒ずくめ。で、左目に眼帯。しかも、このご時世。真っ暗いマスクなんかして……立ってるだけで暑苦しい。 弟子に言わせると 『それは厨二病です』 と。 『なんだい、そりゃ? 聞いたことない病気だね?』 『病気と言えば病気です。その人、何か言ってませんでしたか? 左目が封印とか。宿った力がとか』 『あー……前になんか言ってたね。左目のこれは代償とか、俺は転生の輪から外れてるからとか』 『……それは重症です。手遅れ』 気の毒そうな顔して、そんな風に言ってましたね。 まぁ、弟子の言うこともわからんではないですよ。 友達……ノボルは、どことなく浮世離れしてるというか……。 人間ってのは、大なり小なり『欲』がある生き物です。なのに、ノボルからはその『欲』が感じられないというか……。 『無欲』とも違う。 『空虚』とも違う。 そこに居るのに、居ないような……。この世のものでもあの世のものでもない。不思議な……言い方を変えれば、不気味な男です。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加