真打・死神

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なんで、そんな男と出会ったのかと言えば、代筆やら題字の作成やらを頼んだ時に、代理で来たのがきっかけでね。 ああ、ノボルはね。書家って言ってました。物を書いて生計を立ててると。 『ふーん。食ってけるのかい?』 って聞いたら 『ない』 って、潔い返事が返ってきましたね。 『だから、副業をやってる。パチンコとか』 そこから話が弾みましてね。やれ、新機種がどうだ、あそこの何台目が出るとか、新台入れ替えがどうだとか。 お恥ずかしながら、あたしもパチンコには目がないもんですから。 気がついたら、パチンコ仲間になっていたという話でして。 ただ、ね……。後からですが、いろいろノボルについての噂は耳にしました。 高名な占い師一族の当主だとか、霊力があるとか……ね。 常人とは違う、不気味な雰囲気っていうのは、多分、そこから来てたんでしょうね……。 まぁ、普段のあいつはボンヤリした、朴念仁にしか見えませんけどね。 それでも、妙に達観してるような口ぶりの時もありました。 いつだったか、こんなこと言われましたっけか。 『咄家ってのは凄いな。俺の本質を見抜いてやがる』 『ばぁちゃんが言ってたな。優れた咄家は、言霊を使う。世の中のどうしようもない哀しみや憎しみ、怒り……業を笑いに変えて、他人を幸せにする。俺達が命を削りながらやることを易々とやる。あんたは優れた咄家だよ』
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