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誉められてるようだったんで、礼は言いましたがね。
そのノボルと……久しぶりに会いまして。
このご時世だったから、なかなか会えなくて。久しぶりに会えたってのに、開口一番、こんなこと言われました。
『あんた、死神はもう止めろ』
演目・死神──。ええ。あたしの十八番です。
これがあったから、あたしは名人と呼ばれ、勲章も頂いた。
真打の中の真打と言われた。
それを──会っていきなり止めろなんて言うもんだから、あたしもちょいとキレましてね。
『久しぶりに会った友人に、たいした挨拶じゃねぇか』
『友人だから言ってる。あんた……このまま、死神をやってたら間違いなく悲惨な死に方するぞ。いや……死ぬだけならいい。転生の輪から外れちまう』
『あ? なに、わけのわかんないこと抜かしてやがんだ』
『気がついてねぇのか……。いや、気づくはずがないんだよな……。その“死神”は自覚のある無自覚なんだからな……』
ノボルが悲しそうにそう言いましてね。
その瞬間でした。
あたしであって──あたしではない。そんな感じがあたしを支配しまして。
そう……。あれは、ちょうど──
演目の……“死神”をやってる時の感覚に似ている──
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