歌舞伎小説 あやかし異世鑑定団

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 二人はぽかんと灯狐を見つめた。 「無に帰すとは……どういうこと?」 「すべてを焼き尽くせばよいのじゃ。玄次さん……あれを」 「ははっ」  玄次が榊を灯狐に手渡すと、彼女は再び宙に五芒星を描きはじめた。 「地・水・火・風・空(ち・くう・か・ふう・くう)烈・火・業・滅(れつ・か・ごう・めつ)……再世(さいせい)!」 「やばい、究極の印を結ぶつもりか」蒼太は青竜の姿への変化(へんげ)を急いだ。  空から無数の火柱が舞い降り、地上を埋め尽くす。風が吹き荒れ、その火は勢いよく大地に広がっていった。  地響きとともに、展望台の硝子窓一面に地獄絵が描かれる。星彦達が窓の外を見下ろすと、真っ赤に燃え盛る劫火(ごうか)が地上を埋め尽くしていた。 「なんてことだ……」想像もしなかった光景に星彦は開いた口を閉ざすのを忘れた。  ギギィという音が響き、床が斜めになっていくのを蒼太は感じた。 「みんな、この塔はもうすぐ倒壊する。俺の背中に乗れ!」  言われるがままに全員が青竜の背中に乗り、(うろこ)につかまった。青竜は展望台の窓を突き破り、空高く舞い上がった。  天空の塔は根元の支柱が溶けはじめ、ガラガラと瓦礫をまき散らしながら、原子爆弾とともに炎の海に沈んでいった。  塔の姿が見えなくなるとズウウンという鈍い音とともに、大きな噴煙が空にゆっくりと昇っていった。  星彦は赤く染まった煙が舞台の幕を下ろすのをただ傍観するしかなかった。
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