歌舞伎小説 あやかし異世鑑定団

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 やがて火が収まると青竜は地上に舞い降りた。頭を地面につけると、そこからひとり、またひとりと路上に足をつけた。 「ああ、本当にすべてが終わってしまった……」  星彦は両手を路面につきながら涙を落とした。それを見た灯狐は彼に一言を添えた。 「按ずるな……あの炎は業を焼き尽くすもの。魂あるものを滅することはない。周りをよく眺めるがよい」  星彦が目を上に向けると、そこには青空を背景に高層建物が立ち並ぶ街並みと天空の塔がそびえる景観があった。 「これはかつてと同じ景観……! 漫画を立ち読みした店もある。どういうことだ?」  灯狐は装束の袖から写真を取り出した。 「この絵にある景色がおぬしらの望む世界であろう? すべてを一度無に(かえ)(よみがえ)らせた。一からやり直すとよい。もう一度ふたりで希望の芽を(はぐく)み、新たな世を創れ。必ずや幸運が訪れるであろう」  星彦と機姫は灯狐から写真を手渡されると、顔を見合わせた。 「もはや人も機械もないな。苦しみあったところで何も生まれない。出直すとするか……」 「はい、私もお手伝いいたします」 「それでよい」
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