歌舞伎小説 あやかし異世鑑定団

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 蒼太は大鉈を振りかざすと、機械兵軍勢の中へ飛び込んでいった。次々と襲いかかる鉄の塊を紙切れのように切り刻んでいく。 「すごい……あの人、一体何者なんです?」 「あの者か? (われ)が旅の途中、拾ってやった奴じゃ」  機械の群れが後から後から押し寄せ、蒼太を羽交い締めにする。 「お嬢! これではきりがない。元の姿に戻ってもよいか?」 「好きにするがよい」 「ぐるるる」  蒼太はうめき声を発すると、まとわりついた機械の塊を一気に突き飛ばした。(うろこ)を生やし尾を伸ばすと巨大化して、その姿を(あら)わにした。  口から炎を噴き出すと、無数にうごめく機械の群れは高熱の蒼炎(そうえん)の渦に包まれ、ぷすぷすと黒い(すす)となり朽ち果てた。 「あれは伝承に伝わる『青竜(チンロン)』では?」 「名もなき者だったので蒼太と勝手に呼んでいたがの? まあよい、橋を渡るとするか」 「灯狐さん、あなたは魔王か、それとも……」
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