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【庵side】
「よお、庵！昨日のオーディションどうだった？」
「ダメっす、全然」
「気を落とすな、また来週もあるだろ？」
「はい…」
事務所を出て、二人がすれ違うことも苦しい狭い階段を降りていると話しかけて来た10歳上の先輩。吉田龍一郎。
嫌味で結構嫌われてる。さっきのもたぶんダメだったことを知って聞いてきたに違いない。
まあ吉田先輩は主役級なんかはないけど、ドラマや舞台じゃ五番手くらいにはいる。
俺の今の生活はオーディション以外は居酒屋と引越しとウーバーの配達でどうにか食い繋いでるって程度。たまにエキストラの仕事があるだけ。
こんなんじゃ茉莉子と暮らすなんて夢のようなもん。
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