ひまわりの笑顔

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 7年前ひまわり畑であの子と約束した。 『ここでまた会おう』  タンクトップから細く伸びる真っ黒に焼けた肌。肌とは対照的に輝く白い歯。忘れることの無いあの夏の日。それなのに、思い出に現れる男の子の名前は…思い出せない。 「あーもう!ずっと家がお隣同士の男の子と恋に落ちるっていうのが夢だったのに、なんで私の家の隣はあんたの家なのよ!」  杉崎日和子、16歳。運命的な恋を夢見る女の子。 そんな私がずっと夢見てることが、これ。しかし、現実にはそんなキラキラしたものはなく、私の隣に住んでいるのは、陰キャメガネの翔だけだ。  小さい頃は近所で有名なほどかっこよかったらしいが、今やその面影はどこへいったのやら。  私は小学3年生より小さい時の記憶がない。家族や翔は思い出そうとしなくていいっていうけど、私だけ知らないことがあるのはもどかしい。  さて、さっきの話に戻るが、私がこの話をするのは高校に入って今日で168回目。聞いてくれる友達も最近はスルーし始めてきた。でも、今日はもう1つ聞いて欲しいことがある。 「ねぇ、聞いて!今日の夢でね、ある一人の男の子と私がひまわり畑にいてまた会う約束をしたんだけど、私、その男の子が誰だか分からなかったの。これこそ運命かな?」  私がワクワクしながら話すのに対し、みんなの目は呆れているように見えた。だから、翔に聞くことにした。 「翔〜、私達が小さい時に仲良かった男の子って思い出せる?」 「………覚えてない」 「なんだ残念」  …この時の翔の表情をちゃんと見ておけばよかったのだが、この時の私は舞い上がっていて、ただ夢の相手に恋をしていたので、1ミリも翔のことを見てはいなかった。  6月の4週間目、突然転校生が来るという噂が流れ始めた。4組の子が職員室に入った時に知らないイケメンがいたらしい。その話を聞いた私は、もう喜びまくりで明らかに舞い上がっていた。  そして、7月の1週間目、彼は私のクラスにやってきた。 「尾崎翔太です。小学3年生まではここに住んでいましたが、家の事情により今まで本州にいました。戻ってくることを決めたのは昔、約束をした子にまた会うためです。よろしくお願いします。」  私にとってこんな完璧な自己紹介はなかった。私は勢いよく立ち上がり、 「杉崎日和子です。私は小学3年生までの記憶がありません。何か知ってることはないですか?!」  勢いだった。別に本当にあんな事になるなんて思ってもみなかった。
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