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翔太side
好きな子がいた。ヒマワリのような子だった。
9歳の夏まで住んでいた島に8年振りに帰ってきた。
親の再婚により本州に引越していたが、高校生になったということで、小さい時に住んでいたこの島に一人暮らししてもいいと母に言われた。
そして今日、7月の1週間目という微妙なタイミングで高校に入学することになった。先週、1度学校に行ったら職員室で生徒に会ったが、あれはあの子だったのだろうか。それともクラスメイトだろうか、とモヤモヤしたまま今日を迎えた。友達は出来るだろうか、勉強はついていけるだろうか…そんなことよりも、初恋のあの子と再会できるかが僕の最大の心配だった。
しかし、その心配は要らなかった。元々、この島には高校がひとつしか無かったし、元々住んでいた場所であの子のおばさんに会ったからだ。
期待に胸を膨らませ、僕は高校の門を通り、校舎へと入っていった。
「これからよろしくね、尾崎くん。」
担任は若い女の先生だ。僕は1年2組に入ることになった。
先生と一緒に教室の前に行き、漫画みたいだなぁと思いながら、先生の話を聞く。
「今から先生がクラスのみんなに話をするので、入ってきて、と言ったら教室に入ってきてください。」
少し緊張しながら僕は頷いた。
ガラガラガラと教室のドアが開き、中にいるクラスのざわめきが止む。
「おはようございます。今日は転校生を紹介します。」
その先生の一言に、クラスがまたざわめき始める。
「静かにしてくださーい!では、紹介するので入ってきてください。」
ガラガラと扉を開けるとクラスメイトの視線が俺に集中して緊張が高まった。しかし、胸を張り真っ直ぐ教卓へ向かった。
「尾崎翔太です。」
自己紹介はなんて言ったか覚えていない。なぜなら、その後に発されたある女の子の一言が衝撃だったからだ。
「杉崎日和子です。私は小学3年生までの記憶がありません。何か知ってることはないですか?!」
びっくりした。なんたって、8年前、あのひまわり畑で約束をした女の子と高校入学早々再開してしまったのだから。勘違いじゃないかもう一度聞いて確かめようと思った。
「…ひなちゃん?」
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