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「あー、むかつく。もぅ、お前とは絶交だ!」とヒロシ。
「あぁいいよ、絶交だね!」と僕。
夕暮れ時の橋の上、僕たちは絶交した。
「いいな、お前とは二度と口聞かないからな」
そんなヒロシの言葉にむかついて、僕だって黙ってはいられない。
「あたり前だ、声も聴きたくない。顔も見たくない」
お互い言いたい事を言った。さよならだ。
僕はヒロシを置いて早足で家を目指した。するとあいつは、僕よりもう少し早足で、僕の横をすり抜けて一歩前を歩くんだ。
僕はそれもまたむかついて、さらに早足であいつを抜かしてやった。ざまあみろ、そんな風に思っていたら、またあいつに抜かされた。
家に着く頃には僕も、あいつも、すっかり息を切らしていた。
ヒロシの家のが僕の家よりも一軒手前だった。ヒロシの家を素通りして、僕は家のドアの前に着いた。
ヒロシの方を向くと、ヒロシはドアノブに手をかけながら僕を見ていたんだ。
なんだろう、お腹の奥の奥の奥から笑いが込み上げてくる。
くそ、笑うな、笑うな。笑ったら負けだ!
顔を上げるとヒロシと目が合った。ヒロシの口がへの字に曲がっていた。僕とヒロシは同時に噴き出してしまった。
沈みかけた太陽に照らされているせいだろうか、ヒロシの顔が真っ赤に染まっていた。きっと、僕も同じなのだろう。
「また明日な」と二人。
◆◆◆ 完結 ◆◆◆
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