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住宅街に隠れえるように、その社はある。
十メートルあるかどうかの、正方形に切り取られたような土地。背の低い鳥居をくぐり抜け、数歩で終わる石畳を歩けば、小さな社が道行く人々を見守るように佇んでいる。
この社の名前も、何が奉られているのかも、誰も知らない。
古くからあると言うのだけが、土地の人間によって伝えられているが、どれほど昔からあるのかは、誰も知らない。
江戸時代からだと言う人もいれば、もっと前だという人もいる。
昔から知る人々は、社についての話を必ずこう締めくくる。
昔は、曼珠沙華がたくさん咲いていたと。
だから今も、その社はこう呼ばれている。
曼珠社と。
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