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 平成が終わった。令和が始まった。変な感覚だ。俺は令和を生きるつもりはなかった。2012年に人類が滅亡しなければ自分で命を絶つつもりだった。というか実際にそうした。まさか二郎君に現世に引きずり戻されるとは思わなかった。令和の俺も平常運転。町内のファミリーレストランで梅昆布茶を飲んでダラダラしていた。今日は佐々木さんも道連れにした。フード付きのトレーナーにショートパンツ。食べているのはチョコレートパフェ。ザ・女子高生。キラキラだ。いいと思う。でもそのキラキラを俺に見せても仕方がないというものだ。三十路男と女子高生。字面だけ見ればいろいろと危ない。俺は佐々木さんを見る。彼女は溶けかけたチョコレートアイスをスプーンで掬って食べている。俺も何か食べようかなと思い始めたその時、俺は気付いてしまった。 「あ」 「急に何ですか」 「指輪」  佐々木さんの右手薬指に光る物が見えたのだ。俺は身を乗り出してテーブルの向こうにいる彼女の右手を掴んだ。ピンクシルバーのリングに小さな宝石が埋め込まれている。 「ペアリングですな」 「だったら何なんですか」 「相手は山崎さんか」
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