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「俺の実家から持って来たんですか」  二郎君は控えめに頷く。それからひとつひとつ部屋にある物を指差しながら「あの本棚とDVDのセットとテーブルとアルミラックも傳嗣さんの物です」と言った。この行為をどう受け止めて良いかわからない。それだけ俺のことが好きなんだなと思うべきか、気持ち悪いなと思うべきか。一旦考えるのは辞めて買って来た物を冷蔵庫に入れた。調味料や食材が入っている。自炊してるんだ、偉いな。二郎君が俺の横から手を伸ばして冷蔵庫の麦茶を出す。ふたつのグラスに注いで居間のローテーブルに置いた。体を丸めてテレビラックにしまったDVDセットを漁る。バラエティ番組のやつ。俺が持ってたやつ。 「どれ見ますか」 「二郎君が選んでください。誕生日なんだから」  二郎君は小さく呻きながら目を細め考え込むように顎に手を当てる。悩んでる悩んでる。そんな様子も可愛い。時間はたっぷりあるのだからいくつか選べばいいのだ。敢えてそんな提案はしなかった。悩んでいる顔をしばらく見ていたかった。俺が居間に戻って麦茶を一口飲んだ辺りで彼はようやくDVDのケースをひとつ出して俺に見せた。
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