【ショート・ショート】おたふく風邪は、ただの風邪

小室、と呼ばれる元医学生のYouTuberがいた。

かつては、芸人も志していたという小室だが、その経験が小室のコミュニケーション能力を伸ばしたらしく、彼が開設した「民間療法」YouTubeチャンネルは好評を博した。

中でも、小室がYouTubeで語った

「血管マッサージで疲労回復」
「キャベツジュースでガンとサヨナラ」
「おはぎの甘味で超健康体」

といった民間療法は、批判もあったものの、実際にその療法で体調が改善した人達がいた事もあり、いつしか小室はネットのみならずテレビにも出演するようになった。

「僕の健康法を否定する人は、安直にデマと否定するんじゃなく、せめて論拠(ろんきょ)をしめして欲しいよねぇ」

芸人が司会の番組で、「ホンマでっか？」という突っ込みを浴びながらも、冷笑気味に切り返す小室。

その姿は、常日頃において人生の答えを求めている大衆にマッチしたようで、テレビの出演を繰り返す度に小室の人気も国民的なモノとなっていった。

もちろん、小室の民間療法に対して論拠(ろんきょ)をしめして批判した人間は数多くいた。

が、小室は「固定観念にとらわれた専門家には、僕の療法は理解出来ない」と、それらの声を一蹴し、小室はYouTubeやテレビにおいて、その道の専門家が首をかしげるような斬新な民間療法を次々と発表していった。