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そんなこともあったので、翌朝は少し身構えていた。 けど、酒匂はいつもどおり俺の前に現れた。 「おはよー、みっくん」 履いていたのはズボンだった。どうやらクリーニング店に特急コースでお願いしたらしい。 酒匂は、これまでと変わらなかった。 いや、本当は何か変わっていたのかもしれねーけど、少なくとも俺の目にはそう映っていた。 俺たちは、昨日観たBSの「野球ソウル」の話をしながら学校へ向かった。 そして、いつもどおり正面玄関で別れた。 それからしばらくは、変わりばえのない日々が続いた。 おかげで、俺の頭のなかからは、あいつの女装のことなんてすっかり消え失せてしまっていた。 それを再びほじくりおこすことになったのは、日暮れが少しずつ早くなりはじめたころ──制服が、夏服から冬服に切り替わってすぐのことだった。
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