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そんな俺の心配は、杞憂に終わ──ってほしかったんだけど、現実はそう甘くはなかった。 まず、仲の良い女子たちが「あやめ〜!」と嬉しそうに食いついてきた。 彼女たちは、俺がみっくんに片想いしているのを知っていて、その上で「男子のふりなんてさっさとやめるべき」って日々チクチク言ってくる。 だから、スカート姿の俺を見ていろいろ早とちりしたらしい。 「よくやった、あやめ!」 「ついに決心ついたんだね!」 違う違う、これは今日だけ。 事情を説明すると、彼女たちは「はぁっ」って顔をしかめた。 「いいじゃん、これからはスカートでいこうよ!」 「ついでに『俺』って言うのもやめなって」 「もっと可愛い格好しようよ!」 そんな彼女たちは、今日も制服のスカートを自分好みに調節したり、唇をツヤツヤにしたり、甘い香りを漂わせたりしている。まさに、女子であることを全力で楽しんでいるって感じ。 そうだよな。俺が、みんなと同じくらい「男子っぽくふるまう」ことを楽しんでいるなら、みんなもあれこれ口出ししないんだ。 でも、俺自身ちょっと迷いはじめているから「もうやめなよ」って言われてしまうわけで。 「ねえ、その格好みっくんに見せにいこうよ」 「えっ、やだよ! 絶対やだ!」 「なんで? いいじゃん」 「もしかしたら意識してくれるかも」 「かわいいって思ってくれるかも」 思わないよ。 みんな、みっくんの女嫌いを甘く見過ぎ。 女子の話題が出ただけで鳥肌たてるような人だよ? まあ、小学生のころの話ではあるんだけど。 「とにかく、会いに行くのは無理だから」 むしろ、今日一日会わないように気をつけないと。こんな姿を見られて「そういえばこいつ女だった」って今更距離を置かれたくはない。 そんなこんなで彼女たちに「絶対会わないから」って念押しして、ようやく俺は自席についた。 けど、ここからがまた厄介なんだ。 「ふーん」 さっそく、隣の席から含むような声が聞こえてきた。
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