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俺と酒匂が出会ったのは、小学校5年生のとき。
当時、俺が所属していた地元の野球チームに「酒匂あやお」と名乗って入団してきたのがキッカケだ。
そのころから、酒匂は髪が短くて言葉使いも男っぽかったから、監督やコーチを含めてみんなあいつを男子だと信じて疑わなかった。ついでに、あいつだけ地元の小学校じゃなく国立大学の付属校に通っていたことも、けっこうな期間嘘がバレなかった一因となった。
酒匂は、鈍くさそうに見えて野球センスのかたまりみたいなやつで、あっという間にレギュラー入りを果たした。
打順は2番、ポジションはショート。
俺は当時からキャッチャーだったけど、あいつの守備のうまさに何度助けられたかしれねぇ。「うまいやつが入ってきたな」と、みんな本当に有り難く思っていたんだ。
そんななか、酒匂が実は女子だと発覚した。
あれは、たしか隣町のチームとの練習試合のときだったか。女子トイレに入っていくあいつを相手チームのヤツらが目撃して、そこから大きな騒動になった。
酒匂の両親含め、父兄が集められていろいろ話し合いが行われたらしい。
その結果、なんとかあいつはチームの一員として認められ、卒業するまで「2番・ショート」の座を誰にも譲らなかった。
そう、酒匂あやめは俺にとって小学校のときの野球チームの後輩。
で、今はただの幼なじみってわけだ。
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