94人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなささやかな想像は、現実の前にあっけなく消えてしまった。
昼休み、まさかのみっくんとの遭遇。
青ざめる俺に投げかけられた、直球ど真ん中な一言。
「どうした、その女装」
──正直に言おうか。
まずはホッとした。
これでへんに意識されて敬遠されるようになったら、それこそ泣いても泣ききれない。これまで積み重ねてきた6年間が、すべて無駄になってしまう。
だからこれでいい。
大丈夫、俺たちは何も変わらない。
で、その次が「納得」。
そうだよね、みっくんってこういう人だよね。
うんうん、知ってた、知ってるよ、みっくんらしい一言だよね。
でも、一緒にいた女の子たちは、皆びっくりするくらい憤慨していた。
「ありえない」
「あやめ、もうあんな人やめなよ」
「こっちからふっちゃいなよ」
いやいや、ふるもなにもみっくんは俺のこと別に好きじゃないから。
俺がみっくんをふるには、まずはみっくんに好きになってもらわないといけないからね?
そう指摘すると、なぜか「もう」って頬をつねられた。さらに一番憤慨していた女の子が、ドスの効いた声で吐き捨てた。
「はっきり言ってさ、あやめにはあんな幼なじみより小津のほうがよっぽどお似合いだと思う」
最初のコメントを投稿しよう!