94人が本棚に入れています
本棚に追加
目がとけそうなほど泣いた数時間後。
俺はふつうに塾に向かい、数学と古文の講義を受けて帰りの電車に揺られていた。
失恋ってすごい。今はかろうじて我慢しているけれど、油断しているとすぐにまた涙があふれそうになる。
一方、同じくらいお腹が空腹を訴えてきた。そういえば昼食を食べていなかったっけ。人間の身体ってすごい。失恋してもちゃんとお腹はすくものなんだ。
駅の改札をくぐると、立ち止まることなくまっすぐ交差点を渡った。
今までの俺なら、みっくんが帰ってくるまでファストフードや本屋で時間をつぶしていたんだけど、もうそんなことをする必要はない。みっくんと二度と登下校することもない。
ああ、やばい。それはそれで寂しいな。
今日起きたこと、全部リセットされないかな。
でも、みっくんの前でこれまでどおり振る舞える自信がない。やっぱり、もう二度と会わないほうがいいんだ。
そんなことを思いながら歩いていたから、いつもの、朝、俺が声をかける交差点まで来たとき、大げさではなく本当に悲鳴をあげそうになった。
だって、見慣れた人影があったから。
「よう」
あのとき──俺が女子だってバレたときと同じ。
みっくんは、ガードレールに寄りかかってこっちを見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!