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さて、ここからが可憐な魔法少女の最強伝説、始まるぜ。
なんて大層に言ったところで現実はただのお金稼ぎなんだけどな。
働かざる者食うべからず。それはロリっ娘だからって許されるものではない。
うん。マオお姉ちゃんがいてくれるとしてもね。
大好きだからこそ与えられるだけの関係にはなりたくないの。
「まあ無難に薬草採取からかな。討伐系って言ってもだいたいは素材集めになっちゃうし」
「素材集め?」
「うん。モンスターを倒してその体の一部を色々なものに使うためだよ。解体とかこっちじゃ本当繊細な作業になるし」
そういうことか。ゲームじゃボタン1つで済むけどリアルだと血抜きやら何やら色々手間がかかるものだよな。
そしてサバイバル経験なんてものはもちろんないド素人の自分にいきなり出来るかと言われたら無理がありすぎる。
……それとたぶん、シャルルの魔法じゃモンスターも消し炭にしてしまっちゃう気がする。
「危ないことはないの?」
「あるよ普通に。モンスターも何もいないところに薬草が自生してくれるわけないし」
「そ、そうだよね」
「何をするにしても危険と隣り合わせ。それも自分の力で解決していかないとね」
「うん」
バーチャルな世界で楽しんできていたことだけれど、こう言葉にされるとちょっと重いな。
とはいえ最強のロリっ娘を目指していくんだから怖がってなんかいられない。
頼もしいお姉ちゃんもいるんだもん、はりきっていこう。
「わたし、がんばる」
「気合いを入れるのは良いことだけど、張り切り過ぎないでね?」
「ふぇ?」
やだなぁ。さすがに私も焼け野原にしたりなんてしませんよぅ。
「ふわぁ」
「ふふ。良い反応」
薬草採取に必要な保存用のバッグ。地味ながらも現実にあれば世界が変わるアレ。
ファンタジー最高!
「まあそうは言ってもこれは一番格安のやつで全然量は入んないけどね。30リットル。もうちょっと大きいものなら45リットルがあるんだけど」
「……なんだかゴミ袋みたい」
「ふっ。自分で何を入れたか忘れていくつも持ち歩く人間もいるのさ」
ファンタジーな世界の世知辛い現実を知りました。
んーと、ひぃふぅみぃ──
「おおおおねえちゃん!?」
「ん?他に面白そうなものでも見つけた?」
「面白くなんてないよ!逆に怖いくらいだよ!?」
「んー?」
のんきに言ってないでってば。
家庭的なのかと思いきや実はめちゃくちゃ高級品。7桁ですよ、ローンでも組まないとまず手を出さない数字。
「現実世界に存在したらこれでも安いくらいだよね」
「そうかもだけど。いやまさかさすがにこれを買うなんてことは、ね?」
「初お仕事祝いに」
「ダメーっ!ぜったい、ダメ!」
「えー」
えーじゃなくって!
就職祝いに車を買ってもらうって人は確かにいるかもしれないけどさ、私は無理だよ。
それほどのものをポンとプレゼントされて、ありがとうなんて平然と答えられるほど器はおっきくない。
小心者のちょーびびりですぐ泣いちゃう、か弱い女の子。
「代わりにひとつだけお願いがあるからさ。もらってくれないかな?」
「ぅー。おねがいって?」
「ふふ、うん。シャルルちゃんがこの先どういう人生を歩むことになっても、一生私の友達でいてほしい」
「……ぇ?」
どういう人生って、今は全然明日のことすら想像つかないよ?
将来結婚するのかとか、それこそ男の子を好きになれるのかどうかすら──
「というかずっとシャルルちゃんのお姉ちゃんでいさせてほしいな」
「やだ」
「えっ」
「やだ、やだもん。マオお姉ちゃんはマオお姉ちゃんだもん。ぜったいぜったい離れてなんかあげないんだもん!」
ばかばかばかっ。こんなちびっこ一人にさせようだなんてダメに決まってるじゃんか。
うぅ。ちょっと考えただけで涙が出てきた。
もう、止まんないよ。
「うえぇぇ。おねえちゃぁん」
「ごめん、ごめんねシャルルちゃん」
「あ"ぅ"〜」
「お姉ちゃんが本当馬鹿だった。うん、絶対に離さないよ。シャルルちゃんありがとう」
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