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「おや?いくらこの辺りのモンスターが弱いとはいえ女の子二人だけじゃ危ないよ?」
「お気遣いありがとうございす。でも、大丈夫ですから」
「ん、そっか」
街の外に出て見ると意外にもモンスターよりも人に出くわすほうが多かった。
よくよく考えれば冒険者が生業として成立している以上おかしくも何ともないのだけれど、勇者一人旅とかよくやってただけにちょっと不思議な光景だった。
とはいえ、いちいちゲームとの違いに驚いていたらきりがない。しっかりしなきゃ。
「マオお姉ちゃんが美人さんだからみんな声をかけてくるね」
「いやいやシャルルちゃんが可愛すぎるからじゃない?」
「えへへ」
「うふふ」
人の多さからしてよほどの危険などなさそうなのにちょくちょく声がかかるのはそういうことだよね?男性諸君。
一人なら鳥肌ものだろうけど頼れるお姉さんが一緒なので笑っていられる。
顔が良くて苦労することって決して少なくないんだなぁ、うん。
「とはいえこうも邪魔が入ると目的が果たせなくなっちゃうわね」
「う、うん」
しつこいナンパにボルテージが上がってしまっています。
あれだけのお金をポンと出せるんだからマオお姉ちゃんって本当にすごい人なのだと思う。
その本気が見てみたいような、ちょっと怖いような。
「あのね、探す時のコツを教えて?」
「──うん、そうだね。シャルルちゃんは四葉のクローバー探しは得意?」
「ふぇ?」
また懐かしいことを。でもやんちゃ盛りの男児だった頃にそんなかわいらしいことをしたような覚えてなんてないなぁ。
探し物とかって正直苦手だったりするんだよね。見つからない時の焦りでなーんかトイレが近くなってきて……
「その顔は、ちょっとダメそうだね」
「あぅぅ」
「まさしく間違い探しみたいなもので良く似た中から探し出すしかないんだけれど。日陰が良いとか木の根の近くなんて聞いたこともないし」
きゅぅぅ、とお腹が締め付けられるような感じ。
「だ、大丈夫だからね!?難易度で言うならノーマルレアくらいだからすぐだよ、平気平気」
ぷっ。マオお姉ちゃんもなかなかのゲーマーだったんだね?
そうだね。すぐに見つけられなくても別に叱られるわけじゃないもん。
よーし。ちびっこらしく幸運のクローバー大捜索だ。おー。
って、探し物はクローバーじゃないの。
「ふんふんふーん。あっ」
「おっ?」
「ねぇ見て、お姉ちゃん!」
まだイントロだったのに早くない?奇跡だよ奇跡!
「うわっ」
「ええっ!?」
「マジだよ、マジだ。ほんの一瞬で見つけちゃうなんてシャルルちゃんやばくない?」
「ふえぇぇっ」
頬をむにっとされました。どして?
摘んじゃヤなの。痛くないけど。でもヤなの。
「あ、ごめん。あんまりもちもちしてたから、つい」
「ぐすっ。マオお姉ちゃん、ひどいの」
「はぐっ!ご、ごめん」
「じーっ」
「ごめんなさいもうしません。シャルルちゃんの言う事を何でも、一つ聞くからどうか許してください」
「……ん」
なんでも?なんでも、なの。
へへへ。どうしよっかなぁ?
「それじゃぁ、はいっ」
「へっ?」
めいいっぱい両手広げて笑顔で。
もぅ。マオお姉ちゃんってば察しが悪いの。
「いっぱいいっぱいぎゅーするの。仲直りのしるし」
「っ!あぁもう、可愛いすぎるよ!」
「えへへっ」
すれ違いの時にはたくさん大好きだよって伝えるの。
これからも、ずーっと。マオお姉ちゃんと共に。
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