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「てへ。はりきりすぎちゃった」
「……」
や、ここ笑うとこだってば。
火の玉が飛んで行くくらいのつもりで唱えた魔法が標的を跡形もなく消し飛ばしてしまうなんて。
ちょっと壁まで凹んでるよね?まさか損害賠償請求されるとかないですよね?ねぇっ?
「すごいすごい!シャルルちゃんもうびっくりしたよ!」
「ええと。まあともかくこれは合格しかないですね」
マオお姉ちゃんがとても喜んでくれているのでとりあえず良かったかなと思います。
ごめんなさい職員のお姉さん。器物損壊してしまうなんて思ってもいなかったんです。
「ただ威力は確かですが今後周囲にいらぬ被害をもたらさないとは限りません。修練を怠らないで下さい」
「はいっ。もちろんです」
目線は完全にマオお姉ちゃんで。はい。保護者ということで構わないですもう。
え、えっと。弁償はしなくて大丈夫なんですよね?
恐る恐るうかがっているとお姉さんがニコッと笑顔になった。
分かんないけど、とりあえず笑顔でお返事するの。
「大丈夫よ。シャルルちゃんは気にせず一流の冒険者目指して頑張ってね」
「う、うん。がんばるのっ」
「うふふ」
えへへ。お姉さんも頭なでなでして応援してくれたのです。
色々あったけど無事試験をクリア。
よしっ。今日からオレもいっぱい冒険するんだ。
「それでは登録料100ゴールドお願いします」
「はーい。ちょっと待ってくださいね」
と、意気込んでいたんだけれど。
世の中そんなに甘くないか。タダより高いものなんてないって言うもんな。
じゃなくて。マオお姉ちゃん、そんな支払いまで。
「いいの。可愛いシャルルちゃんに借金なんてさせられないからね」
「あぅ。えっと、その、ありがとう」
「うん。どういたしまして」
お世話になった分はこれから返していけばいい。
素直に甘えることにしてお礼を言うと頷いて笑顔を向けてくれた。
それにしても、借金って結構簡単にできちゃうんだな……
「いけませんよシャルルちゃん」
「ふわっ!?」
「たとえ返せる見込みがあったとしても借金は絶対にしてはいけません。場合によってはお金の代わりに何を要求されるか」
「そう、なにを──シャルルちゃん、もしもの時は必ず私に言うんだよ。一人で決めちゃダメだから」
「わ、わかったの」
かなり真剣な顔で注意されました。
もしも幼い女の子が──うぐ。考えるだけでぞっとする。
可愛すぎても苦労するって本当なんだな。あの時の視線を思い出してしまってマジ寒気がしてきた。
「シャルルちゃん?どうしたの、大丈夫?」
「ふ、ふぇぇ」
「えっ、なんで!?あっ。もしかして脅かしすぎちゃった!?」
「ごめんなさいごめんなさい。シャルルちゃん、私達がついていますから、絶対に危ない目には遭わせませんから」
「そうだよっ。シャルルちゃん一人じゃないよ。私達がいるよっ」
ぐすん。お姉ちゃんたち、ぜったいぜったいはなれちゃやだよ。
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