1章

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 「家族」でいた日は少なかったと思う。  結婚した時から、週に一回ペースで実家の両親呼んだり、帰ったりと夫婦でいる時間が少なかった。娘が生まれた頃から更に拍車がかかった。  自分は実質婿のような扱いだ。  家に来ても「(すばる)くん、早く今の仕事やめてうちを継ぎなさい」とか「建築の仕事なんて、柄の悪い人がやるもんじゃん。あなたも不良だったでしょ?」と失礼極まりないことを散々言われる。  建築の仕事のイメージが悪いのは事実だ。 「柄の悪いあんちゃんやおっちゃんがやるもの」のイメージが強い。  確かに”見た目”はちょっと……な人は多いが、仕事は真面目にやってくれるし、手先が器用な子が多い。職人気質のおじさん達に可愛がられている。  建築の仕事は命に直結するので、安全に対してかなり神経質になっている。真面目にするのは当然である。安全を(おろそ)かにすると、職人さんが般若のような顔で強い口調で注意する。  汗水流して仲間で働くのは楽しいし、完成した家や建物を見たお客様が喜んでいる姿を見てると、この仕事をやって良かったと思う。  この世の中で欠かせない存在の仕事だ。  毎回義理の両親から仕事をなじられると歯を食いしばりたくなる。
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