77人が本棚に入れています
本棚に追加
「アダム! 何さっきから大騒ぎしてんのよ!……って、猫! アンタ猫なんて拾ってきたわけ?」
ローズおばさんは俺の肩にしがみついて離れない猫ちゃん役を指差し、シワシワの目を丸くした。
「拾ってない! 勝手に部屋に入ってきたの! おばさん、ちょっと引き剥がすの手伝って!」
ローズおばさんはやれやれという顔で猫ちゃん役の腕を引っ張った。引っ張られた猫ちゃん役はますます爪を立て俺の肩にしがみつく。ああもう、買ったばかりのシャツの襟が穴ぼこだらけじゃないかぁ!
「やだってば! 引っ張るのやめて! 僕はアダムさんちの猫になるんだから! このおばさん嫌だにゃあぁぁ!」
いま、にゃあって言った! かわいい!
「にゃーにゃーうるさい子ねぇ! アダム、アンタこの子飼うんなら、家賃に上乗せしとくから!」
「えっ、飼うわけないでしょ、猫じゃないんだから! 早くサーカス団に戻さないと!」
すると、猫じゃない?とローズおばさんは不審げな顔をして、猫ちゃん役から手を離した。
「猫じゃなきゃ何なのさ」
そう真剣な顔で聞かれると、ちょっと自信を失うんですけど。
「い、いや……猫の役だろうけどさ。ぞ、ゾウには見えないよね」
どうやらおかしな返答をしたらしい。ローズおばさんは人を蔑むような目で俺を見た。
「野良にしてはきれいな白猫じゃないか。アンタに懐いてるようだし、責任持って飼ってやんなよ。じゃあ来月から、家賃に3フラン(※約3千円)上乗せしとくからね!」
ローズおばさんは引き留める間もなく、そう言い残して部屋のドアを閉めた。
最初のコメントを投稿しよう!