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「……いや、待て待て。野良? 白猫? 上乗せ?」
ローズおばさんが部屋から出ていくと、猫ちゃん役はほっとしたのかようやく俺の肩から降りた。左右違う色をした大きな瞳がニコニコと俺を見上げる。
「よかったぁ。アダムさん、僕をここに置いてくれるってことでいいんですよね?」
頭についた三角の耳が、ピクピクと細かく動いている。
たしかに付け耳にしては出来が良すぎるんだよな。うねうねと蛇みたいに動く尻尾も、どうなってんのか全然仕組みがわからない。
「……君ってまさか本物の猫? 人間に見えるのは俺だけで、本当は猫なの? まさか俺、頭がおかしくなった?」
少年は俺を見上げ、胸を張って言った。
「僕、猫です。アダムさんの頭がおかしいかどうかは僕にはわかりません」
まさに言葉通りに、俺は頭を抱えた。
猫が少年に見えるなんてこの世の終わりだ。
たしかに俺は男のくせに男が好きで、可愛い男の子を道端で拾うという叶わぬ夢を胸に抱いたことは正直ある。だけど猫を可愛い男の子に擬人化してしまうほど相手に飢えているなんて――!
「じゃあいま君と話をしているのも、寂しい独り身の男が一方的に猫に話しかけているようにしか見えないの? うわああ、いやだああ、ゲイの上に変人なんて!」
「はい、僕猫ですけど、言葉わかるんで安心してください! 独り言にはなってないです! 側から見れば変人かもしれませんが、僕は気にしないです!」
そう言って猫少年はきげんよく俺の腰に抱きついてきた。
冷静になってよく見れば、まさに美少年という感じの整った顔立ちをしている。その白い猫耳と尻尾のせいでなおさら可愛い。
人間にすれば十代前半といったところだろうか。手を出すにはちょっと幼すぎるな、なぁんて不埒なことをさっそく考えてしまう。いや、嘘。そんなこと絶対にしないってば。
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