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白くて丸く、デジタルで表された顔が上下するだけのAIさなえは、俺が話かけない限り、話かけてこない。
でも、話かけるとちゃんと会話が成り立つ。
おまけに、その日のうちに充電しておけば、コードレスでスーッと動いてくる。
高級家電のようなものだ。
かなり高かっただろうと思うが、妻は自分が亡き後、俺の事を心配していたんだろう。
おかげで俺は、妻がなくなったさみしさから癒されている。
ある日、俺はさなえに聞いてみた。
「一回、外出してみるか。外に出て、いろんなものを見てみるか?」
「ワタクシは、外をシリマセン。公園や遊園地の定義はシッテイマス。」
「知らないなら、見せてやるよ。カメラ機能はついているのかな?」
「カメラはあります。でも付いているだけデス。どう機能するのかはシリマセン。」
俺は、さなえを公園に連れていく事にした。とはいっても、これだけを持って歩くのは抵抗があったので、黒い手提げバッグにすっぽりと入れた。
「公園に着くまでは辛抱してくれ。着いたら、いろんな花を見せてやる。俺の妻も花は好きだったからな。」
「ハイ、ワカリマシタ。」
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