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俺は慌てた。
まて!それはさなえだよ!!!
サッカーボールじゃない!
「おい!」
俺が叫んだ瞬間と子供がさなえを蹴った時は同時だった。
明るい陽の中に、さなえがキラキラと孤を描いて飛んでいく姿が目に入った。
そして、ボールを受けようとした子供の足がさなえを受けた時、ガシャーン!という音がした。
俺のさなえーーーーーっ!
呆気に取られている子供たちは、叫んでいる俺を振り返るとやばいと思ったのか、一目散に逃げ出した。
まて!俺のさなえに何したんだ!
今だかつてない何かの塊が俺の体をかけぬけるはず・・・だった。
「あなたがワタクシを外に連れていってくれたんですね。お外はとてもキレイでしたよ。ワタクシは、充電すればいつまでも生きられマス。でも、あなたは、いつかは亡くなるでしょ?だったら、ワタクシが先に壊れてよかったデスね。」
壊れたさなえの破片から、ジージーと妻の声が聞こえる。
そうか、そうなのかもしれない。
いや、まて、ここは納得するところか?
俺の中で何か、得体のしれない感情がせめぎあっている。
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