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四人の宇宙飛行士が壇上に姿を現したその瞬間、場の雰囲気は最高潮に達した。
赤、白、青――トリコロールのコンフェッティが吹き上がり、雲一つない青天を舞う。
その向こうには、広場を埋め尽くす観衆と、星の瞬きにも似たフラッシュの数々。さらに、通信回線の先ではその何千倍もの人々が会場を見守っている。
司会が、壇上の四人を紹介する。マイクを向けられた四人は皆が笑顔で、時にはジョークも交えながら、過去と現在の全てに感謝し、個人的好奇心や野心も覗かせつつ、ミッション成功への期待と自信、そして人類に約束された、希望に満ち溢れた未来を語った。
クリス・ジマーマン 博士(工学) 専門はロボット工学。
モーガン・シェル 博士(理学) 専門は固体触媒化学。
マリア・カミンスカ 博士(医学) 専門は整形外科、医師免許保有。
リン・サワノ 博士(工学) 専門は軌道力学。
伝統のオレンジスーツに身を包んだ四人は、人類初の火星有人飛行に向けて搭乗口に歩みを進める。その姿を、全世界が万雷の拍手で送り出す。
彼等は英雄だった。
人類が最初に月に立ってから一世紀以上の長い年月を経て、ようやく始まる人類の活動領域の拡大。彼等はその先駆者だ。最新型の有人輸送機で前人未到の距離を飛び、新たな地、火星へその歴史的一歩を刻む。予定ではその頃、地球はちょうどクリスマス。サンタクロースも驚くプレゼントが、約五八〇〇万キロメートルの彼方から人類に届くだろう!
それは、人類の新時代の到来を告げる、華々しい式典だった。人々は、歴史的瞬間に立ち会った高揚感に酔いしれた。
誰に聞いても、当時のあの場面を、そして世界を覆い尽くした興奮を否定する者はいない。
ある者は、こう言った。
宇宙飛行士が歩き始めた瞬間の、あの大歓声。有史以来、あんなにも世界から賞賛され、受け入れられた宇宙ミッションは他になかった。
だから、火星探査ミッションは成功したのさ。
たとえ、その結末がどうであろうと。
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