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さっきまでは余裕の笑みすら浮かべられていたのに。
上手く頭が働かない。
カラカラに乾いた喉と見開いた目。
「親がいないってかわいそーう。捨てられちゃったのー?」
激しく動揺を見せた私を嘲笑うように高田さんは言葉を続けた。ケラケラと笑いながら。
可哀想。
意識がぼんやりと宙に舞う。
久しぶりに言われたなぁ、見下すようなことを。
気に留めなければいいのに。
なんでだろう。寂しくて不安な気持ちに襲われて息が詰まる。
「可哀想だな」
空気を刺す低く何の感情も込められていないような声。
あぁ、皆そんな風に思うんだ。
親がいないだけで“可哀想な人間”というレッテルが貼られる。
声のした方に視線を向ければ、見覚えのある顔がそこにあった。
男にしては綺麗な顔のその人はクラスメイトの1人。たったそれだけの印象で、特に会話をした覚えもないはず。
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