第十四章:証拠の無い物語

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「集団ストーカーに襲われているんです」 「あなたはそんなに要人なんですか?」 寒空の広がる日、元警官の横島は午後の診察室で、医師と向かい合って座っていた。横島は全身にインクを付けたまま、歯噛みした。 今、横島は電磁波攻撃を受け、生活保護を受けながら、ボロボロの生活を送っている。彼は集団ストーカーの存在も友の会の内情も知ってる。しかし、それを言う事は出来なかった。 やっぱりインクを付けた倉科は、深夜に自宅を飛び出し、暗い夜道を叫びながら走った。 「嫌だ、もう電磁波は嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!」 昔だったら座敷牢送りだが、現代にも保護室というものがある。彼は非会員の家族に理解されず、3日後、精神科に入院させられた。 大和健吾もインクを付け、電磁波の被害者になっていた。彼は連日眠れず、一方で昼間自宅で起きていられないせいで見るかげもない。ホームレスと見まごう姿で、午後の公園の冬の白い花、吹雪の君の下を彷徨っていた。 風が吹き、花吹雪が散った。大和は吹雪の君の木を見上げた。太い枝先に小悪魔的な容姿の男性が花魁姿で座っていた。 「朝霞……、御門……? いや、違うな、あれは……白蛇」 大和は自分の目を擦った。 花魁は現代の中性的なショートヘア姿で髪の一部にローズピンクの付け毛をして遊んでいる。白蛇のあやかしか毒婦のように見えた。化粧をほとんどしておらず、着物の裾は引きずるものではない。そして袴女子の真似のように、毒々しい深紅ののブーツを履いていた。 白蛇は蠱惑的な唇で微笑し、言った。 「ブルーフェニックスは集団ストーカー行為をするよ。友の会と同じこと出来なかったら戦えないからね」 花吹雪が散った。白蛇花魁は、枝の上で立ち上がると気持ち良さそうに風を受け、直後に背後にくるりと宙返り。そのまま姿を消してしまった。
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