27人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「ところで話は少し戻るけど、昇華って表現、変だったかな……?」
「Dが上位の存在に思える表現だ」
「上位……実際そうなんじゃない」
「おいおいミチル、勘弁してくれよ。人間様はまだイケるぜ?」
「何を根拠に」
「昨日俺は、Dをヤった」
「やった……殺したのか?」
殺せるはずがない。
先に述べたように、Dは不死と言われている。ひと時流行ったゾンビものの映画やゲームを思い浮かべるとわかりやすいかもしれないが、たとえアサトがDに向かって銃を発射し見事心臓を撃ち抜いたとしても、けしてその動きを止めたりは出来ない。尤も銃なんて、持ち合わせているわけもないのだが──
しかしながらDはゾンビではない。
あのようなおぞましい、あるいはチープな姿かたちを取っているわけではなかった。いわゆるゾンビであるなら、僕は最初からゾンビと表現する。Dは美しい外見を持っていて、腐肉や血にまみれてはいない。太陽に当たって灰になる吸血鬼とも違う。
「殺しちゃいない」
アサトはまた笑い、自分の親指を人差し指と中指の間で抜き差しする、というジェスチャーをした。
「……え?」
「Dの穴に俺のをブチ込んでやったってことだよ」
「言い方に……品がない」
下品なのは好きではなかった。アサトはけして上品な男ではなかったが、下品である必要もない。或いは僕をからかっているだけなのかもしれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!