第1話 終わる世界

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「ところで話は少し戻るけど、昇華って表現、変だったかな……?」 「Dが上位の存在に思える表現だ」 「上位……実際そうなんじゃない」 「おいおいミチル、勘弁してくれよ。人間様はまだイケるぜ?」 「何を根拠に」 「昨日俺は、Dをヤった」 「やった……殺したのか?」  殺せるはずがない。  先に述べたように、Dは不死と言われている。ひと時流行ったゾンビものの映画やゲームを思い浮かべるとわかりやすいかもしれないが、たとえアサトがDに向かって銃を発射し見事心臓を撃ち抜いたとしても、けしてその動きを止めたりは出来ない。尤も銃なんて、持ち合わせているわけもないのだが──  しかしながらDはゾンビではない。  あのようなおぞましい、あるいはチープな姿かたちを取っているわけではなかった。いわゆるゾンビであるなら、僕は最初からゾンビと表現する。Dは美しい外見を持っていて、腐肉や血にまみれてはいない。太陽に当たって灰になる吸血鬼とも違う。 「殺しちゃいない」  アサトはまた笑い、自分の親指を人差し指と中指の間で抜き差しする、というジェスチャーをした。 「……え?」 「Dの穴に俺のをブチ込んでやったってことだよ」 「言い方に……品がない」  下品なのは好きではなかった。アサトはけして上品な男ではなかったが、下品である必要もない。或いは僕をからかっているだけなのかもしれなかった。
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