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第1話 終わる世界
世界は終わりを告げた。
国家は崩壊し、生き残った人間は散り散りに身を潜め、【D】と呼ばれる存在に怯えている。
Dとはなにか。
暗闇(Darkness)、死(Death)、など諸説あるが、今となっては意味などどうでも良い。人間とDはとても共存出来るものではない。それだけは揺るぎない事実なのだ。
Dからしてみたら人間はひどく脆弱な存在だ。人間はすぐに死ぬがDは違う。Dは不死の存在と言われている。何かの法則に従って思考し、行動し、人間を死に至らしめるのだ。しかしそれは「愛」ゆえに。
Dが人間に向けた「愛」を、僕は知っている。
終わる世界で彼らが求めるもの──それはきっと人間という殻を破り、彼らと同じ存在へ昇華させることなのではないか。
「昇華とはまたおかしな表現を選んだものだなぁ、ミチル」
かたかたとワードプロセッサのキーボードを叩いている僕の隣で、一緒に暮らしているアサトが自分の無精髭をざらりと撫でて笑った。
「人間に向けた愛、ねえ……」
「うるさいな」
「何故そんなものを書く? もっと楽しいの書けよ」
「楽しくなくて悪かったね」
「まあいいけど」
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