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「あ、ゴメンゴメン。片づけたまんまだった! 三井さん、お待たせ~! 紗英ちゃん連れてきたよ?」
おもむろにクローゼットの左側の扉を開けた若菜。
その向こう側、クローゼットの中に『三井愛理』と思われる子がいた。
ヒッと零れ落ちかけた悲鳴をかろうじて飲み込んだのは、若菜がいつものような穏やかな笑みを浮かべて私を振り返ったから。
若菜の笑顔と相反するこの光景が嘘みたいで……。
2メートル目の前で起きている異常事態に腰が抜けたように動けなくなった。
「死んで、るの……?」
クローゼットの中にもたれかかり、一糸まとわぬ裸の三井愛理がグッタリとしていた。
ただグッタリしているわけではない、ガムテープで何重にも巻かれた身体。
口にも目元にもそれは張られていて、胸や太腿や体のあちこちに何か、例えば鋭利な刃物で切り裂かれたような痕。
それはいつからなのか、既に血が乾ききった場所もあったり……。
「死んではいないと思うの。多分ね、貧血と熱中症。ね、三井さん」
ベリベリベリと勢いよく目元のガムテープを剥がすと、その痛みのせいなのか、うっと三井さんがうめき声をあげたことに生きていることを知りホッとした。
ぼんやりとゆっくり目を開けた三井さんが最初に見たのは、私だったようだ。
「んんうっ、んんんんっ、んんううううっ」
充血した目から大粒の涙を流し、私に向かって何かを必死に訴えてくる。
「ねえ、若菜? どうして? 誰がこんなこと?!」
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