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「嘘ばっかりつくんだもの。閻魔様は噓つきの舌を引っこ抜くでしょ、だから」
向こうを向いていた漣の顔を私に向けるように首の向きを変える若菜。
その表情は苦悶に満ち、口からは長く伸びきった舌。その先端部は大きく切り取られ、口元を真っ赤に染めた漣は既に絶命しているようだった。
恐怖とその血塗られた光景に吐き気を催してしまった私に。
「大丈夫? 紗英ちゃん。具合悪い?」
昔からよく知っている心配そうな優しい顔を見せる。
こみ上げてくるものを必死に飲み込んで。
「ふ、二人とも。若菜が、やった、の?」
「多分」
多分、って。
「だって、気付いたらこうなってたんだもん。三井さんは怖くて動けなくなったから捕まえただけだし、ね?」
捕まえただけ、って。
傷だらけの三井さんの痛々しい身体を見れば、そんなわけないのに。
「三井さんね、謝るの。すっごく謝ってくれたの。謝って、謝って、助けて下さい、って。私なんかよりも、もっと前から漣くんと関係のある人がいるよって。紗英ちゃん連れてきてくれたら、その人の名前話すから助けて下さいって。ね、三井さん」
ねえ、と小首を傾げた若菜に三井さんはまた震え出す。
三井さんは既に恐怖で支配されているようで。
私もまたこの異常さに抗えなくなり始めていた。
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