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「でも、なんで紗英ちゃんを呼んで、なんて言ったんだろうね? 三井さん。紗英ちゃんが私の親友だからかな?」
脳裏に浮かぶのは先週の出来事。
彼と少し離れた街の水族館でデートしていた時のことだ。
バッタリと三井さんと出会ってしまったのだ。
私の手をパッと離した彼に三井さんは詰め寄った。
少しだけ私とも口論をした。
結局お互い同じ穴の狢で、それ以上不毛なののしり合いはしなかったけれど。
だって、アイツはそういう男で。
軽くてノリが良くて、何股でもかけちゃうけれど一緒にいると楽しくて。
「じゃあ、改めて三井さん。漣と前から関係のある人が誰なのか、教えてくれる?」
若菜の手が、ゆっくりと三井さんの口元のガムテープを剥がし始める。
止めて、止めて、お願い、止めて!!
「漣は若菜の彼氏なのに、酷い!! 酷いよ、三井さん!!」
気付けば若菜と三井さんの間に這うようにして入り込んで。
真っ白な三井さんの首に手を伸ばす。
真っ赤な充血した目は更に赤みを帯び、何の抵抗もできないまま。
私を睨むようにして少しずつ閉じていく。
声にならない声が聞こえなくなった頃、力を籠めすぎて震える指先の力を少しずつ抜くと。
三井愛理はその場に倒れ込んだ。
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