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「ねえ、紗英ちゃん? 私って人からどんな風に見られてるんだろ?」
「どうって……、」
珈琲を飲みながら彼女の顔をマジマジと眺めた。
中高と一緒だった親友の若菜が突然放ったその言葉に、考え込むふりをする。
パッと見、素直そうで、自分の意見を持っていない。
どこかオドオドとしていて、人に気を使いすぎ。
ただよく知る身として言えば、温厚で誰に対しても優しいし、彼氏にだけじゃなく、周りの友達にも尽くすタイプである。
非力で儚げで、優しそうで可愛い見た目。
男子から見たら、『あの子、可愛いじゃん』
女子からすると『絶対、あざといでしょ』
脳裏に過ったことをそのまま伝えたら、まるで私が嫉妬しているみたいに思われるかも、と考えて。
「若菜は、誰に対しても親切だし、可愛いし、優しそうって思われてるんじゃないかな? なに? 誰かに何か言われたの?」
慎重に言葉を選びながら、無難な答えを絞り出す。
大学帰りのカフェはいつものこと。
ただ今日は会った時から元気のない若菜、その理由を問いただす。
「私ってね、何をしても怒らなさそう、って言われたの」
「誰に?」
「漣くんに」
「あー……」
漣は若菜の彼氏、私たちと同じ大学の同期生だ。
アイツなら言いかねないけれど。
言わんとしていることは、わからないでもない。
「若菜が優しすぎるから、怒らせてみたくなったんじゃない? からかわれたのよ」
「そうなのかな? 紗英ちゃんも私に対して、そう思ったこと、ある?」
即座に「無い」とは言い切れなかったから、曖昧に笑って少しだけ首を振り否定して見せた。
ある、本当はある。
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