2🔥

6/6

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 パワハラの言質を取られた大貫本部長は、ブリザードを発した東原さんと共に巨体を引き摺って出て行った。  青い炎がゆっくりと鎮火していくのを見つめ、胸の奥でふるえる初めての感覚を噛みしめる。  退出間際、各店の店長から「武田さん見ててスカッとしたよ〜!」と口々に囁かれて、不思議な気持ちになる。  片付けで会議室に残りモニターのコードを外していると、岩本さんが近付いてきた。 「武田さんも怒るんだね。驚いたよ」 「……怒る? 私が?」 「東原さんはいつも通りだけど、武田さんが静かに怒りだしたから、意外で」  胸をふるわす波の正体が、やっと分かった。  怒りは暴力だ。相手を見えない炎で燃やし、痛めつける。ずっと誰かの怒りの炎に怯えていた私は、怒る意味が分からなかった。 (青い炎は、私が怒ってたのか) 「……見ていられなくて」 「僕をかばってくれたんだよね?」  はにかむ岩本さんを前に、青い炎は消えている。 「理屈がおかしくても毎日怒られ続けてると、だんだん麻痺してくるんだ。だから、自分の代わりに怒ってくれて、嬉しかったよ。  ……ありがとう」  とげのない岩本さんの瞳にぶつかり、胸の奥がもう一度震えた。  青い炎と一緒に、初めて味わう熱。体の芯がじんと痺れていくのを私は戸惑いながら、その炎をそっと胸の奥で灯し続けた。  了🔥
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加