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パワハラの言質を取られた大貫本部長は、ブリザードを発した東原さんと共に巨体を引き摺って出て行った。
青い炎がゆっくりと鎮火していくのを見つめ、胸の奥でふるえる初めての感覚を噛みしめる。
退出間際、各店の店長から「武田さん見ててスカッとしたよ〜!」と口々に囁かれて、不思議な気持ちになる。
片付けで会議室に残りモニターのコードを外していると、岩本さんが近付いてきた。
「武田さんも怒るんだね。驚いたよ」
「……怒る? 私が?」
「東原さんはいつも通りだけど、武田さんが静かに怒りだしたから、意外で」
胸をふるわす波の正体が、やっと分かった。
怒りは暴力だ。相手を見えない炎で燃やし、痛めつける。ずっと誰かの怒りの炎に怯えていた私は、怒る意味が分からなかった。
(青い炎は、私が怒ってたのか)
「……見ていられなくて」
「僕をかばってくれたんだよね?」
はにかむ岩本さんを前に、青い炎は消えている。
「理屈がおかしくても毎日怒られ続けてると、だんだん麻痺してくるんだ。だから、自分の代わりに怒ってくれて、嬉しかったよ。
……ありがとう」
とげのない岩本さんの瞳にぶつかり、胸の奥がもう一度震えた。
青い炎と一緒に、初めて味わう熱。体の芯がじんと痺れていくのを私は戸惑いながら、その炎をそっと胸の奥で灯し続けた。
了🔥
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