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 怒っている人は、小さい時からどこにでもいた。  店員さんに向って「何だその態度は」と暴言を吐く人、周りがうるさいと怒鳴るクラスメイト、電車内でいらいらしている人。「味噌汁がぬるい」と言ってお母さんにお椀ごと投げ返していたお父さんーーー。  その度、その人達の発する怒りが私には見える。  幼稚園に通い初めの頃から認識しはじめた。  目の前にいる先生が、いつまでも遊ぶのをやめない私達に向かって「もうやめなさい!」と叫ぶと、ぼおうっと炎が口から吹き出したのを、先生の膝下から見上げた。 (ひりひり、する)  オレンジ色が広がり、小さな私の体を包みこむと、着ていた水色のスモッグがあっと言う間に黒焦げになった。 ーーー焦げたように見えた。 (痛い)  きょろきょろと周りの反応を見ても、叱られる友達は怯える子、泣く子はいても、痛がる子はいなかった。  どうやら、マッチをやコンロを灯して見る火とは違うと、小学生に上がってから理解した。  実体がないため他の人には見えないらしく、図工の時間に「担任の先生の絵を描いてみましょう」とお題を出され、黒炎を背景にした村上先生を提出した時は、お母さんが呼び出された。  以来、人には言わないようにしている。
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