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(遠目で見て美人だとは思ったけど、本当きれいだな)  自社ブランドのカットソーの上には、鋭い瞳が長い睫毛におおわれ、筋の通った鼻と完璧な形の唇がおさまっている。クールビューティーと言うのか、ブリザードのような冷気をまとう東原さんは、炎の中でひんやり冷気を纏っている。 「医務室、私が連れて行くわ。岩本くんは早く店に戻って、目標達成の施策を練ったほうがいいわよ」 「東原さん冷たいなぁ」 「――もちろん、あとで私も埼玉店サポートしに行くから」  笑う岩本さんの顔から、少しずつ幻の火傷あとが消え始めていく。  つめたい態度を見せる東原さんの口から吹かれる氷の粒が、私以外には見えない岩本さん火傷のあとを、ゆっくりと覆っていた。  固辞したにも関わらず、「後輩のサポートも仕事のうちだから気にしないで」と、私に関心ないようなふりをしながら、東原さんに医務室へと案内された。 「すみません、ありがとうございます……。休めば大丈夫なので、」 「――武田さんって、HSPなの?」 「え?」 「――ごめんなさい。急に不躾だったかも。会議中、記録をとりながらどんどん顔色変わっていっていたから。特に、店長達が叱責されている間、あなたのほうが叱られているみたいな顔をしていたから」  HSPと呼ばれる心理的概念を、最近はよくメディアで目にする。感受性が強く、他人の気分に影響を受けやすい、などと聞くけれど自分がそうかどうか考えたこともなかった。 「分からないですけど、多分、違うかと……」 「そう。じゃあ、無理しないでね」  クールビューティーはもう私に興味がないという風に、背中を向けて出て行く。モデルのような後ろ姿は、氷の結晶をやわらかくまとわせているのを見ていると、私は眠りに落ちていった。
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