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「あーもう、全く何なんだよ! こっちのエリアの店長達は! 西日本エリアはもっとましだったぞ!」  受話器を置いた瞬間、フロアに不満を垂れ流す声が響いた。電話終えた直後で良かった。振り返らなくても分かる。ボスゴリラ、大貫本部長が戻ってきた。 「店長達にかかってるのになぁ、 本社組も覇気出ないだろう?」  矛先がこちらに向かってくる。  早く仕事に戻らなきゃ。付箋をそっと外し、手帳に貼って引き出しにしまう。 「あ、武田さん! 今日の議事録どう?!」 「……お、大貫本部長、お疲れさまです。す、すぐにお送りします」 「おー、早くな。店長達に自覚させないとな、全く。本当だらしない店長ばっかで困るわ」  厳しい巨体が背後に立たれ、ぐつぐつとマグマが噴き出し始める。不満で満たした小さな火の玉が、私の足元に転がっていく。ぷすぷすと煙をあげ、パソコン周りを覆っていく。 (……痛い)  膝の上で揃えた指先が、また赤黒く滲んでいく。  モニターに映し出されたワード文書には、さきほどの会議の議事録が、一言一句漏らさずアリの行列のようにひしめき合っている。 『埼玉店・岩本店長』と記した欄に、ボスゴリラがまくし立てた言葉が乱れている。 『・店長としての自覚が足りない  ・愛想よく対応するだけが接客ではない  ・アイディアがない』  罵詈雑言としか呼べない言葉の羅列に、私の目の奥が痛む。 (……こんなのただの文句じゃない)  けれど会議中、誰一人歯向かわなかった。
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