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 走れど走れど、同じような路地の繰り返し。喉に痛みを覚え、息も切れ切れに伊織はしゃがみこむ。 「もう嫌……」  スマートフォンの画面を点灯させ、見たくもないあべこべな日時を確認して首を振りながら膝に顔を埋めた。  恐怖と疲弊とで、涙が滲む。  ──ふと、滲んだ視界に革の靴が映り込んだ。 「え……?」  人気のない路地に突然現れた存在に、びくりと肩を震わせる。 「君……」  躊躇うような青年の声に、伊織はおずおずと顔を上げた。 「ああ、良かった。……君、伊織さんだよね。立花伊織さん」  安堵の笑みを浮かべたのは、前髪の長い、陰気な雰囲気を持つ青年だった。
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