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「どなた……ですか?」
手を差しのべられ、助け起こされながら問えば、青年は薄く笑った。
「……困らせてしまってごめんね。徳田くんにうんと叱られた」
「徳田……? あの、よくわからないんですけど……」
青年が自らを名乗らなかったことも、某人気男性シンガーソングライターのようなもさりと長めの髪も、伊織の警戒心を煽っていく。
まさか自分のようなごく普通の高校生にストーカーなどという仰々しいものがつくとは思ってもいないが、万が一……と考えてしまう。
青年は困惑し思わず後ずさる伊織の手を取った。
「僕が君を連れてきたんだ。ここへ」
「ここ……? 連れてきたって、どういう……」
伊織の手を大事そうに両手で包み込み、青年は隈のうっすらと浮いた不健康な瞳を細める。
「ご案内します。僕らの……幽界へようこそ」
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