17/21

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「でも、」  なんとか言葉を絞り出そうと苦心する伊織の下で、気配が動いた。席に着いていた秋声が立ち上がり、伊織を真正面から見つめる。 「伊織さん。あなたには二つの選択肢がある。逆をいえば二つしか選択肢がない。 ここ──幽界に暮らすか、あるべき場所に帰るかだ」 「えっ、じゃあ、帰りたいです」  伊織が控えめに主張すると、秋声は藤村へと横目で視線をやる。藤村は感情の起伏のない顔で、ゆっくりと頷いた。 「ならあなたは、生きていても死んでいても、あるがままに運命を受け入れるしかないけど、いいね」  伊織は思わず藤村と花袋を見やる。二人は神妙に見える顔で、二人のやり取りを見守っていた。 「それ……死んでるかもしれないってことですか? わたしが……?」
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加