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「……本来なら、こういう選択肢すら知られないものなんだ。死ぬ人は死ぬ。生きる人は生きる。
死んだら清算工場へ送られて、清算された魂は再び現し世で使われる。
記憶や感情の残り粕で形成された僕らは、幽界へ来て幽界でまた学び働き休み、永遠の生を生きていく」
秋声が溜め息まじりに言う。苦い顔のまま、続けた。
「つまりは、伊織さんに選択権はないに等しいんだ。
もとの場所に戻って、死んでいたらまた僕らと会うだろうし、生きていたら僕らのことも幽界の存在も忘れて帰って行ける。だから、」
真摯に説明していた黒い瞳が、じとりと藤村を見る。藤村は謎の微笑みで頷いた。
「困るんだよ、勝手にこういうアンフェアなことをされると! 死にたくても生きる人は生きるし、生きたくても死ぬ人は死ぬんだ!」
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