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「あの……今度はどこに連れて行かれるんでしょうか?」
伊織は秋声に手を引かれながら、身を縮め恐る恐る問いかけた。
秋声は共に来るよう伊織に言いつけたのを最後に、むっつりと沈黙のままに歩を進めている。
そのいかにも迷惑そうな空気は、小柄な伊織より手のひら一つ分程しか違わない少年らしい姿のどこから醸されるのかと首を傾げたくなるような威圧感を与えていた。
「秋声さん……」
「すまないとは思っているよ」
呼びかける声を遮るように放たれた言葉は、思いの外覇気がない。気弱な響きで、秋声は続ける。
「ただ、決まりは決まりなんだ。あなたもどうやってあの疑り深い島崎くんを動かしたのか知らないけど、とにかく、こっちもそれ相応に困るんだ。本当にどうやったんだよ」
怒りというより呆れた様子で、手を取り先を行く秋声は首を振った。
「……いや、あなたに言うことじゃなかった。訂正するよ。とにかく、覚悟が決まるまではうちの預かりとさせてもらうから、そのつもりで」
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