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「うち……って」
首を傾げた伊織を振り返り、秋声は溜め息をついた。
「ご、ごめんなさい」
思わず謝罪を口にすると、彼は首を振る。
「説明の連続で疲れただけだ。そもそも、なんで僕はこんな問題児の案内役を買って出てるんだか……」
勝手に誘拐しておいて、問題児とはひどい言い様だ。むっとする伊織などそっちのけで、秋声は薄い腹をもそもそと背を丸めてさすった。
「はあ……胃が痛い」
(こっちだって溜め息つきたいんですが……)
なにしろ、知らぬ間に奇妙な場所に連れて来られた上、自分は死んでいるかもしれないなどと宣われたのだ。溜め息のひとつくらい許されたい。
そう思えど、中学生かそこらの姿の少年に文句を言うのも大人げなく思え、伊織は眉を下げ非難の言葉を飲み込んだ。
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