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「ここは僕たちの寮だ。君が決心するまで、ここに居てもらうから」  そう言って秋声が立ったのは、古民家や茶室という雰囲気の、和風の小さな建物の前だった。  うっすらと暗い竹林の影で、木漏れ日を浴びてひっそりと建っている。  古風な和の空気に初めて面した伊織は、妙に感心してしまった。  ぼんやりと建物を眺めていると、秋声が格子の嵌められた木製引き戸をからりと開け、伊織を振り返った。 「どうぞ」 「あ、ありがとうございます」  そそくさと歩を進め、玄関をくぐる。石畳の玄関で靴を脱ぐと、秋声が後ろで戸を閉め、施錠しているのが見えた。 「出歩きたい時は誰かに声をかけて同伴してもらってほしい。迷われると困るから」 「わかりました」  神妙に頷き、しかし出歩くような気持ちにもなれそうにないなと胸中でひとりごちる。
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