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「武者、聞いたか?」
膨大な書類が収納されているバインダーたちの背を眺めながら、男は問いかけた。
棚に陳列されるバインダーのひとつを手にとって開き、武者と呼ばれた青年は呑気に笑んだ声で返す。
「何を? また新しいニュース?」
「まあ、そんなもんさね。なんだあんた、聞いてねえか」
「んー、どうだろう。聞いたかもしれないし、聞いてないのかもしれない」
のんびりと答えながら、武者はページをめくる。
「まったく、議長が聞いて呆れんぜ。あちこち騒いでるってのに」
棚に背を預け、男は武者の無邪気な横顔を眺めつつ続けた。
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