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「ところでさ、藤村くんはなんでお嬢さんを連れてきちゃったわけ」  ショートケーキの苺をフォークでつつきながら、机の前に胡座をかいて花袋が問うた。当人である伊織も、それはまったくもってわからなかった。頷き、藤村を見る。  藤村はすっとぼけたような真顔で花袋を見た。 「花袋くん、苺、あげようか」 「えっ、いいの。ありがと」 「うん」  苺を皿に移され、花袋は「じゃなくて!」と苦笑がちにつっこみを入れる。 「なんでお嬢さんを連れてきちゃったのって」  問い直され、藤村は一口も手をつけていないショートケーキをじっと見つめて口をつぐんだ。 「え、深刻な感じ?」  花袋がぎょつとして身を引く。 「まってまって、君ってそういうとこあるよね。怖い怖い……何?」  二の腕をさすってみせながら、花袋は耳を寄せる。怖いもの見たさで、耳を塞ごうか迷いながらも伊織も身を乗り出した。
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